- 2011-06-01
- 読書
R+(レビュープラス)さんからの献本枠でのレビューです。
著者 清宮礼子(せいみやあやこ)さんのお父様が、突然のガン宣告を受けてから、亡くなられるまでの1年9ヵ月の記録です。
末期の肺ガンとの診断を受けたお父様。
本人への告知は?治療方法はどうするか?
告知のその瞬間から、著者とご家族は、不安と悲しみで茫然自失という状況のなか、さまざまな決断をせまられていきます。
実は、私の父もガンで亡くなっています。
私が高校2年16歳の6月11日ですから、もう34年も前のこと。
父は胃癌でしたが、最初は胃潰瘍と診断され胃の1/3ほどの摘出手術を受けたのが私が11歳の時。
亡くなる前年あたりから入院し、最後はこの本のお父様と同じように、自宅で療養。
そんなこともあり、この本で語られているご家族の気持ちやその状況は痛いほど察することができました。
たとえば、最初の方に、肺癌ではないかとの疑いから精密検査をし、その結果をまつ間の心情。
「家族全員が、霧に包まれたような重苦しい気持ちで」「『よりによって私の父がそんな病気にかかるわけない!!』と無理やり思い込み、不安を抑える情報はないかと、毎日インターネットを開いては、父と似た症状で肺がん以外のあらゆる病気の可能性を探し、一つ見つけてはそれと思い込み、自分を勇気づけていました。」と記されています。
その後の過程でも、自分の中での葛藤、親子、夫婦、姉弟間での葛藤、せめぎあい、いろいろなことがあったことと思います。
もちろん一番大変なのは患者であるお父様本人なのですが、その家族も精神的、肉体的、そして経済的にも大きな負担を強いられることになるのです。
私の父の時と違うことは、前述の文章にもあるように、今はインターネットもあり、癌という病気そのものや治療法、保険制度についてなど多くの情報が得られることです。
また、自身がそういう境遇にあるから気付くことかもしれませんが、新聞でも雑誌でもガンにまつわる記事がない日はない、というのが現在の状況。
そういう意味では、当時とは比べものにならないくらい恵まれています。
しかし一方では、さまざまな意思決定が、患者サイド、治療を受ける側にも委ねられる、迫られる時代になり、さらに負担になってしまうこともある、と感じました。
お父様がガンの宣告を受けた当時、著者 清宮さんは28歳。
ご家族は、ご両親とお兄さんの4人家族。
この本の帯にも書かれているように清宮さんは松竹に勤務され映画のプロモーションがお仕事。
ちょうどその時に手がけていたのが、あの「おくりびと」というのも不思議な縁に感じられます。
ただ、大人の家族である、ということが一つの救いであり、このようにきちんとした記録を残せた要因であると思います。
お仕事でそれぞれお忙しいとはいえ、お子さん二人が独立し生計を立てているということは、経済的な意味合いからも恵まれた環境。
この本に記されているように、著者が中心となり、治療法や病院、介護保険などの情報を調べ検討し判断していけたのですから。
もし、まだ子どもが幼く、動ける人、知識のある人がいない家庭であれば…
母親1人に負担がかかったり、治療法も比較検討できなかったりと、大変な状況に陥ってしまうことでしょう。
そんな意味で、清宮さんが自らの体験、思いをつづり、参考になるホームページや保険制度のことを本としてまとめてくれたことは大変に意義深いこと。
昔の大家族であれば、子どもの頃から死と向き合う場面が、「おくりびと」となった経験を持つはずです。
そんな経験のないまま、突然、家族のだれかが死と向き合うことになったとき、この本は大きな助けになることでしょう。
プロの作家やライターではない、普通のお嬢さんの文章ですから、親しみやすく、難しくなく、素直に共感できました。
63歳というのは若すぎる死ではありますが、愛する家族に見守られ、お父様はしあわせな最期だったと思います。
ガンに限らずですが、最期を自宅で看取るということはそれぞれが大きな負担を負うことになります。
わが家も、父が自宅に帰ってきてからは、毎日、息をひそめ、緊張しながら生活していました。
もし、もう少し長くあの状態が続けば、母が倒れるなど、なんらかの破綻をきたしていたかも知れません。
緩和ケアの問題などはこれからもっと議論し、患者本人、そして家族の負担を軽減できるような制度をつくりあげていく必要があると、あらためて感じました。
本好きな方はぜひ登録おすすめです!
・【R+】MacPeople 2010年12月号 レビュー
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・読書カテゴリ | 御経塚通信

著者 清宮礼子(せいみやあやこ)さんのお父様が、突然のガン宣告を受けてから、亡くなられるまでの1年9ヵ月の記録です。
末期の肺ガンとの診断を受けたお父様。
本人への告知は?治療方法はどうするか?
告知のその瞬間から、著者とご家族は、不安と悲しみで茫然自失という状況のなか、さまざまな決断をせまられていきます。
実は、私の父もガンで亡くなっています。
私が高校2年16歳の6月11日ですから、もう34年も前のこと。
父は胃癌でしたが、最初は胃潰瘍と診断され胃の1/3ほどの摘出手術を受けたのが私が11歳の時。
亡くなる前年あたりから入院し、最後はこの本のお父様と同じように、自宅で療養。
そんなこともあり、この本で語られているご家族の気持ちやその状況は痛いほど察することができました。
たとえば、最初の方に、肺癌ではないかとの疑いから精密検査をし、その結果をまつ間の心情。
「家族全員が、霧に包まれたような重苦しい気持ちで」「『よりによって私の父がそんな病気にかかるわけない!!』と無理やり思い込み、不安を抑える情報はないかと、毎日インターネットを開いては、父と似た症状で肺がん以外のあらゆる病気の可能性を探し、一つ見つけてはそれと思い込み、自分を勇気づけていました。」と記されています。
その後の過程でも、自分の中での葛藤、親子、夫婦、姉弟間での葛藤、せめぎあい、いろいろなことがあったことと思います。
もちろん一番大変なのは患者であるお父様本人なのですが、その家族も精神的、肉体的、そして経済的にも大きな負担を強いられることになるのです。
私の父の時と違うことは、前述の文章にもあるように、今はインターネットもあり、癌という病気そのものや治療法、保険制度についてなど多くの情報が得られることです。
また、自身がそういう境遇にあるから気付くことかもしれませんが、新聞でも雑誌でもガンにまつわる記事がない日はない、というのが現在の状況。
そういう意味では、当時とは比べものにならないくらい恵まれています。
しかし一方では、さまざまな意思決定が、患者サイド、治療を受ける側にも委ねられる、迫られる時代になり、さらに負担になってしまうこともある、と感じました。
お父様がガンの宣告を受けた当時、著者 清宮さんは28歳。
ご家族は、ご両親とお兄さんの4人家族。
この本の帯にも書かれているように清宮さんは松竹に勤務され映画のプロモーションがお仕事。
ちょうどその時に手がけていたのが、あの「おくりびと」というのも不思議な縁に感じられます。
ただ、大人の家族である、ということが一つの救いであり、このようにきちんとした記録を残せた要因であると思います。
お仕事でそれぞれお忙しいとはいえ、お子さん二人が独立し生計を立てているということは、経済的な意味合いからも恵まれた環境。
この本に記されているように、著者が中心となり、治療法や病院、介護保険などの情報を調べ検討し判断していけたのですから。
もし、まだ子どもが幼く、動ける人、知識のある人がいない家庭であれば…
母親1人に負担がかかったり、治療法も比較検討できなかったりと、大変な状況に陥ってしまうことでしょう。
そんな意味で、清宮さんが自らの体験、思いをつづり、参考になるホームページや保険制度のことを本としてまとめてくれたことは大変に意義深いこと。
昔の大家族であれば、子どもの頃から死と向き合う場面が、「おくりびと」となった経験を持つはずです。
そんな経験のないまま、突然、家族のだれかが死と向き合うことになったとき、この本は大きな助けになることでしょう。
プロの作家やライターではない、普通のお嬢さんの文章ですから、親しみやすく、難しくなく、素直に共感できました。
63歳というのは若すぎる死ではありますが、愛する家族に見守られ、お父様はしあわせな最期だったと思います。
ガンに限らずですが、最期を自宅で看取るということはそれぞれが大きな負担を負うことになります。
わが家も、父が自宅に帰ってきてからは、毎日、息をひそめ、緊張しながら生活していました。
もし、もう少し長くあの状態が続けば、母が倒れるなど、なんらかの破綻をきたしていたかも知れません。
緩和ケアの問題などはこれからもっと議論し、患者本人、そして家族の負担を軽減できるような制度をつくりあげていく必要があると、あらためて感じました。
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